なぜシンガポール?

日本との人口推移比較

日本では総人口は2006年の1.28億人をピークに下がりだし、2019年10月時点では1.26億人となっています。今後下降率はどんどん大きくなる予定で、2060年には88百万人(総務省とうけいきょく推計)に減少すると推測されています。

シンガポールの1961年から2015年迄の人口推移

このグラフはシンガポールの1961年から2015年迄の人口推移です。1980年以降伸び率が上がり、2015年迄ほとんど同じような上昇率で上がり、2018年には564万人となっています。シンガポールの元政府高官は2100年にはシンガポールの人口が1,000万人になると予測しています。これを見るとシンガポールの出生率は高いように見えますね。実は日本の出生率1.44なのに対し、シンガポールは1.20と日本より低いのです。では何故シンガポールの人口が増えているのでしょう。次のグラフを見てください。

シンガポールの人口構成

上のグラフはシンガポールの人口構成を示しています。青がシンガポール国民オレンジが永住権保持者(以下PR: Permanent Residentの略)、グレーは外国人住民です。直近の2021年で見るとコロナの影響で人口は545万人と少なくなっていますが、国民64%、PR9%、外国人27%の割合となっています。コロナ前の2018年で見ると人口は564万人で、構成比は国民62%、PR9%、外国人29%となっていました。見ると明らかに人口増は殆ど外国人が担っていることになります。ただこの外国人の数全体が不動産の賃貸や所有をしているわけではありません。

外国人の構成

外国人労働者の構成を示しているのが上の表です。2018年度で見ますと外国人労働者の合計は138万人、この中住宅不動産市場にはほとんど関係ないのが、メイド(25万人)建設労働者(28万人)です。メイドは雇用者宅に居住しますし、建設労働者は最近のコロナの感染で話題になっています労働者用の寮に居住しています。その他のワークパーミット(WP)保持者は約44万人となりますが、これらの人々は飲食店や小売店の店員等割と低賃金の労働者で、多くはHDB(政府開発の分譲アパート)に部屋を数人でシェアーするような形で住んでいる人が多いと思います。Sパス保持者はワークパーミットよりは給料が高いので、独身はHDBもしくはコンドの部屋借り、もしくは数人で1軒をシェア、家族持ちですとHDBの1軒賃貸という人が多いかと思います。そしてエンプロイメント・パス(EP)保持者はHDBもしくはコンドの1軒賃貸が大部分かと思います。今回統計を見直しまして、2019年とコロナ後の2021年で比較しますEP保持者が17%も減少していることに驚きました。というのはこれだけ減っているのに、コンドの賃貸状況は逼迫状態が続いているということです。

アジア各国との価格と利回り比較

資料元:Global Property Guide https://www.globalpropertyguide.com/Asia/square-meter-prices :https://www.globalpropertyguide.com/Asia/rent-yields

ただシンガポールは世界的に見ても不動産価格はかなり高いです。上記データは金額から見て各国の都市の一等地近辺のコンド等の価格と推定します。上記の比較では香港が㎡辺り$28,570 (107円換算で305万円)、日本に続いてシンガポール$14,373(同154万円)となっています。価格で見るとタイは3分の1ベトナムはシンガポールの6分の1という安さです。また利回りで言いますと、シンガポール3.3%とかなり低いです。例えばインドネシア等は利回りが7%を超えていますが、多くのインドネシアの富裕層はシンガポールの住宅不動産に投資しています何故でしょうか?

為替レート推移

フィリピンペソ対円レート                       タイバーツ対円レート
マレーシアリンギット対円レート                   シンガポールドル対円レート

上記はアジア各国の対円レートの1990年から2019年迄の推移です。フィリピンペソは1990年初め対円レート6円でしたが、2019年にはほぼ2円と3分の1となっています。タイバーツは1990年5.6円でしたが、98年アジア通貨危機時には2.3円まで暴落しました。その後盛り返し現在は3.46円と38%減となっています。マレーシアリンギットは1990年初め対円レート53.2円であったのが、2019年には25.4円と2分の1となっています。シンガポールドルは1990年75.5円でした。2000年には57.3円と円高になってはいますが、2016年には92.5円とシンガポールドルは最高値を記録しました。現在は新コロナの影響で76円近辺ほぼ1990年のレベルと同じです。他のアジア通貨とは違い、一定のレンジを行き来するという強みを見せています。少なくともこの期間にアジアの新進国に投資した人達は、たとえ不動産の価格が大きく上がっていたとしても日本円で投資した部分は大きく目減りしたであろうということです。昨今は100%現地通貨で投資する方策もあるるのかもしれませんが、メディアでアジアの新進国が有望と騒がれているからと言って一生懸命働いてためたお金をなんの方策もせずに投資するのは大きなリスクを孕んでいるということを頭に留めておいてください。

日本とシンガポールの不動産価格推移

日本資料元: 国土交通省                       シンガポール:統計局

上記左のグラフは日本の土地価格推移で、右はシンガポールのコンド価格推移グラフです。同じものを比べているわけではありませんが、大体の動きはわかるかと思います。日本のバブルは異常であったことは否めません。日本の株価も同じような動きをしていました。ただそこが重要なポイントではありません。今日本で住宅不動産へ投資している人達はたくさんいますが、基本的にお金持ちの節税対策、そして値上がり益を求めるのではなく利回りを重視しています。これに反してシンガポールの投資家利回りは低いのは承知の上で将来の値上がり益を期待しています。これは日本のバブル時代と同じような感覚と思われると思います。私もシンガポールへ来た当初はそう思っていました。ただ根本的に違うのは一番最初に指摘しました、シンガポールは政府が人口増加を政策として行っていることです。皮肉にもこれはシンガポールの建国の父と言われるリークワンユー元首相が日本を反面教師として実行してきたことです。そしてこの政策は同元首相の息子のリーシェンロン現首相、そして今後これを踏襲していくであろう与党PAP(People’s Action Party’;人民行動党)の政策です。日本の政治を見てきている私たち日本人にとっては、例えば大統領選挙で対立候補が当選する可能性があるというような危険を感じると法律を変えて有力対立候補が立候補できないようにするようなやり方はちょっと疑問を禁じえません。ただ世界の起業家が安心して投資できる国と認めている背景はそこにあり、今後もそれが変わるような可能性は近い将来はないだろうと思います。というのはシンガポール人の多くが、自分たちの生活が豊かになったのはそいういう政策のおかげだと思っているからだと思います。何故私がそう思うかという理由ですが、最近香港の学生が反政府活動の暴動を起こしています。香港に以前駐在していた私は、暴動そのものを支持する訳ではありませんが彼らのおかれた立場に同情するのですが、シンガポール国民は批判的に見ている人が多いからです。

まとめ

現在新コロナウィルス蔓延の影響で、世界経済が停滞するとみられています。シンガポールもその影響を免れることは出来ないでしょう。ただ言えることは、日本と比べてシンガポールの不動産は上記に挙げた根本的な要因で将来的にも安定して成長していくものだといえると思います。不動産投資は必ずしも最良の投資方法とは言えないかもしれません。ウォーレン・バフェットの様に冷静に長期戦略で株式市場でポートフォリオを構築していけるような人には、必要ないでしょう。ただ多くの株式投資を試した人は、日々の動きに惑わされ結局損をしている人が多いのではないでしょうか?私もその一人でした。不動産市場は日々価格が大きく変動することは殆どありません。ふと気づくとかなり値上がりしているという感じかと思います。今シンガポールは外国人にはABSD(特別印紙税)が20%かかりますので、余程余裕がある方でないと是非とはおすすめできない状況にあります。もしあなたがPR保持者コンドを賃貸していたり、HDBを購入して住んでいるのでしたら、是非コンドの投資を検討されてはいかがかと思います。何故『HDBを長期保有すべきではない』は別のページで説明させていただきます。