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郊外コンド記録的な価格で分譲

シンガポールの北東チャンギ空港の西側に位置しMRTの東西線の最終駅Pasir Ris(パシリス)駅に隣接する敷地に3階建てのショッピングモールを含む複合開発のPasir Ris 8というコンド分譲が7月25日に行われた。分譲価格は平方フィート$1,400~2,000というこの地域のコンドとしては記録的な価格にて総戸数489戸のうち、85%が1日で分譲されたと報道されました。平均分譲価格は$1,600(138万円/㎡)と発表されました。特に驚いたのは、ディベロッパーが同日で6回も値段を引き上げるというかなり乱暴な販売を行ったということです。朝には$1.145百万(9,160万円)であった710フィート(66㎡)の物件が夜の8時には$1.459百万(11,672万円)と27%値段が吊り上げられたということです。

高騰は最近の政府土地高値入札が引き金に

この販売が好結果となった背景としては、前週7月22日に行われた政府による住宅土地入札で、落札をしたのはGuocco Landの$1,204(入札価格を建築される延べ床面積で割った、平方フィートあたりの土地購入費用)という価格です。この土地は北西部のLower SeletarとLower Pierceの2つの貯水池に間に完成間近のLentor駅に隣接する土地で、この土地購入価格をもとにすると専門家の推測ではディベロッパーの売値は$1,900~$2,000を達成しないと利益が出ないとみられています。というのは土地購入費用の他にディベロッパーが負担する費用は、建設費、ファイナンスコスト、マーケティング費用等があり、それにある程度(最近では精々10%程度と言われている)の利益をのせて販売する必要があるからです。2019年3月に行われたパシリスの土地購落札価格は$684.50とされているので、これに比べると1.75倍とかなり高い落札価格となっています。政府の出している統計では、民間住宅の価格は特に郊外物件の値上がりが大きく、2009年の底値を100とする指数でみると2021年第1四半期では郊外は185、都心部が134.3の伸び率を大きく引き離しています。ただ2020年からは中間部の値上がりが大きくなっており170.4と伸ばしています。これだけを見ると、都心部のコンドの方がお買い得と言えるかもしれません。

政府の不動産価格高騰の追加抑制策のうわさ

Pasir Ris 8のディベロッパーはAllgreen PropertyとKerry PropertyのJVで、両社ともシャングリラホテルを有するマレーシアの砂糖王といわれるロバートクオック氏の傘下企業で、シンガポールでは大手のディベロッパーです。シンガポールの民間住宅においては、価格の設定はディベロッパーの自由裁量ですが、不動産の異常な高騰は政府が一番恐れていることでもあり、このような動きが続くと当然政府が追加の抑制策を打ち出すのではないかと噂されています。

未分譲コンドの在庫数減少

シンガポールの民間住宅は2017年政府が抑制策の1つである、住宅不動産売却時の特別加算印紙税の対象を4年から3年に緩和したのをきっかけに大きく上がり出しました。慌てて1年後にはまた購入時の加算印紙税を1率5%上昇させる動きに出ましたが、その後もじりじり上がり続けています。その背景には民間住宅(土地付き除く)未分譲の在庫がかなり減ってきたことも挙げられます。以下のグラフは2000年以降の未分譲在庫数ですが、2015年末から下がり始め、今年第2四半期には19,409戸と2万戸を下回りました。

HDBのリセール価格高騰

郊外のコンドが高騰している背景には、HDBの中古物件の売買(リセール)価格が上がってきているという背景があります。2013年末から不動産売買市場は冷却期間に入りました。その後上述の様にコンド市場は回復しておりましたが、政府はHDBについては99年のリース満了とともに価値は無くなると正式に発表したことから低迷を続けていました。2009年第1四半期の価格を100とした価格指数でみると、2019年第3四半期に底(指数130.8)を打ち、2020年第2四半期からやっと上がり始め今年第1四半期に142.2となっています。ピークは2013年第2四半期の149.4でした。久しぶりに回復した市況に乗じて、HDBを売却してコンドに住み替えるという購入者層(HDBアップグレーダーと呼ばれます)が郊外のコンドの価格を押し上げている要因となっています。

パシリス駅近辺のコンド価格比較

最後にパシリス駅近辺のコンド価格の推移を調べてみました。2013年から2019年に完成した4物件ですが、いずれも駅から3-7分位の徒歩距離にあるコンドです。直近で出来たのはCoco Pamlsというコンドでやはりここが一番高くなっているのが分かります。2014年頃から既に分譲が開始されましたが当初はフィートあたりの価格は$1,000と低迷していました。このコンドの後ろ側に建設中のPaletteやD’Nestの方が高値で分譲されていたようです。ただ2018年頃から逆転してやはり新築の強みを発揮していることを示したいます。直近の取引データを見ますとフィートあたりの価格は$1,300を超えて取引されている物件が多いようです。ただ今回売り出されたPasir Ris 8は平均価格が$1,600ということで近辺のコンドから$300⁻600も高くなっています。5⁻7年程度でのExitを考えての投資ですと、新規分譲のコンドの方が有利というのはわかりますが、ここまで値段が上がってくると今後どこまで上がり続けるかということには多少懸念がある所です。特にご自身で住むことを考えての物件購入でしたらそこまで無理して新築を購入することも無いのではと思います。

コンド中古物件価格も上昇が予想される

当然のことながらこれだけ新築物件が上がれば、中古物件へ流れる人たちも出てくることになります。SRX社が提供しているデータによると、7月の中古物件市況はコロナ規制強化中にもかかわらず堅調であったとしている。前月比の価格上昇は6月の0.2%に対して1.0%の上昇で中でも郊外コンドが1.6%(都心部は0.1%、中間部は0.3%)上昇とマーケットを牽引した。また売買戸数は1,817戸で前月比22.5%増、去年同月比では68.2%となっています。このペースで行くと、年末には去年比10~15%の上昇が見込まれると専門家のコメントです。

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