新規分譲それとも中古?

これもよくある質問ですが色々な角度から見てみる必要があります。不動産ポータルの99.coとChinese News Asiaがまとめた記事がありましたので、それを参考にしましたが結構矛盾しているところもありますので私の見解が多分に入っております。まず中古物件の購入利点を挙げてみましょう。

  1. 直ぐにレント収入がある
  2. 収入の見込みが実績ベースで確実
  3. 既に検査がされているので大きな瑕疵のリスクが低い
  4. 割安物件を見つけることが出来る

ではこれに対して新規分譲を選ぶ場合の利点を挙げてみましょう。

  1. 最新のニーズに合っている
  2. 維持費用が割安
  3. 早期購入者にディスカウント
  4. 選択の幅が広い

上記の列記だけでは理解できないかもしれませんので、以下説明します。

中古物件の利点

1.すぐにレント収入がある

中古物件、特に投資物件で購入している人は、物件を賃貸しています。賃貸期間中に売買することは自由ですが、基本的に売買は賃貸契約を遵守することが条件です。当初から約束がある場合を除いて、売ることを理由に賃借人に『出ていけ』とは言えません。自分で住む為に物件を購入する人には、直ぐには住めないので不便ですが。これに対して投資目的の人には、購入したら直ぐにレント収入が入ってくるので、ローンを組んで投資する人には自分のポケットからお金を出さないで済む可能性が高いので金銭的に助かります。これに対して新規分譲の場合、通常建設工事はこれからという段階で分譲が始まります。つまりビルが完成してテナントが入るまでは全く収入がありません。勿論購入代金は最初に全て支払うのではなく、工事の進捗に合わせて支払いが増えていきますが、全て自分のポケット(もしくはローン)から支払わなくてはなりません。

2.収入の見込みが実績ベースで確実

投資の場合には、購入したけどもテナントが直ぐに見つからなかったり、見つかっても当初予想のレントより大幅値下げをしないとテナントが入らないというような状況が考えられます。それに対して中古物件の場合は、既存テナントが入っていることが多く実際のレント収入が明確である。勿論将来的に既存テナントが退去すれば、レントが上下する可能性はありますが新規物件よりは予想が立て易いかと思います。また新築物件の場合は、自己使用の物件を除き一挙に空き物件が賃貸市場にでますので競合が多く早く決めるには値引きせざるを得ないということが見受けられます。そうすると当初の収入予測よりかなり低くなるという可能性もありますので、当初の予想は低めに設定してくのが賢明かと思います。

3.既に検査がされているので大きな瑕疵のリスクが低い

新築物件の場合完工後1年間はディベロッパーの保証期間となっていますので、購入者は小さなものまで入念にチェックしなければなりません。あるいはテナントが入った場合には、そのテナントがそのチェックの役割を担うことになります。日本の完工検査は厳しいと思いますので、新築物件で、『排水が流れない』とか『電気が点かない』などということはないと思いますが、シンガポールでは普通の様にあります。さすがに1年も住めば大方の瑕疵や不具合等は発見されますので、中古物件の方が購入後に驚きは少ないということなのでしょう。ただ10年以上経つような物件については設備等が老朽化してきますので、色々修理費用負担が多くなることはあります。またシンガポールでの慣行としては、中古物件の購入は現状渡しというのが普通で購入時にあれもこれも修理してもらうという考え方がありません。それと日本では売り手側に重要事項説明の義務がありますが、イギリス流のシンガポールの不動産取引ではCaviat Emptorという考え方があり(こちらのブログで詳しく説明されています)、物件の瑕疵等は買い手が自分で確認しなければなりません。つまり売り手は瑕疵を故意に隠した場合は別ですが、自分からここが問題等という説明義務はありませんので、まだ1年間保証期間がある新築物件もそう悪くはないのではと思います。

4.割安物件を見つけることが出来る

新築物件はディベロパーが販売するので、価格は会社で決めて売るので物件ごとに(同じ条件のユニットで同時期に売られるという想定で)価格は変わりません。これに対して、中古の場合は売り手の事情により、違いが出てくる場合があります。無理して購入したため、ローン支払いが難しくなって手放さざるを得ない場合とか夫婦が離婚したので物件を売って財産の配分をしなければならない等があげられます。

新築物件の利点

1.最新のニーズに合っている

最近の新築物件の特徴としては以下のようなものがあげられます。

  • 大きなプールがある。
  • ベランダが大きく開放的。
  • プライベートリフトがあり、高級感がある。
  • オープンキッチンで冷房が効いている。

確かにこういうのを好むのは日本人でも同じかと思います。ただその見返りとして、以下のような問題も出てきます。結局は住む方がどこに重点を置くかということかとになります。

  • 寝室が狭く、物置がない。
  • バスタブがない。
  • プライベートリフトも狭いユニットだと、室内が丸見え。

2.維持費用が割安

新築の場合は、前述の様にディベロッパーの保証期間は無料で修繕等がされますので費用は掛かりません。またすべてが新しいので維持費用も安くて済みます。建物が古くなればなるほど、維持費が嵩んでくるのは古今東西同じです。これはご自身のユニット内もそうですし、共用部分もそうなります。共用部分の方は管理組合でメンテナンス費用が決められますので、その組合全体の意思が反映されますので維持費用を高いコンド、低いコンドが出てきます。高いコンドというのはどちらかというと、自己使用の所有者が多いコンドで共用部分もきれいに維持したいという意思の表れです。

ユニット内の方ですと、壁が黄色くなってくる、天井がエアコンの影響で湿気が出てきたり、ヒータータンクが壊れたり、エアコンが傷んできた、等々色んな問題が出てきます。壁や床などについては住んでいる人がいかにきれいに使っているかや家主がテナントが変わる度にメンテをきちんとしているかによっても大きく変わってきます。こまめに手入れをしていれば、床の張替え等の費用が掛からないので安く済むという利点もあるのではないかと思います。

3.早期購入者にディスカウント

新築物件ではディベロッパーが最初の売り出しのやり方として、特にマーケットがあまり良くない場合割引価格で出して、最初の販売が好調になるように設定したりします。好調であればその後価格を徐々に上げていく等の戦略です。またディベロッパーによっても利幅の設定が違う等のことがありますので、事前に周辺の物件と比較する等すれば割安で購入することも可能かもしれません。

4.選択の幅が広い

中古物件ですと売りに出ている物件は限られています。高層の景色が良い物件が良いと思ってもなかなか見つからない場合があります。これに対して新築物件であれば、選択肢はたくさんあります。勿論人気がある物件は購入希望者が殺到するため、抽選が行われるため自分が欲しいタイプが選べない場合もありますが。

では新築か中古物件か?

この記事では新築は経験の豊富な投資家に向いていて、初心者は中古物件の方が良いと結論付けています。その理由としては、実際の物件を見てチェックできるので安心であること、実際のレント収入が分かるので、投資の収支や価格上昇等の見込みが立てやすいことが挙げられています。新築物件は、周辺に比較できる物件が無ければ収入予想が難しいこと、また物件が存在しない状態でその物件の将来的な価値等を判断する能力が必要だからと結論付けています。

でも、新築と中古の価格動向を比較してみると…

確かに上記記事の言っていることはわかります。実際に全く比較できる物件が無い新しい地域に出来るものは、確かに的確な判断は難しいかもしれません。ただ当地では計画的に開発用地が入札に出される等、街中にも将来開発のための空き地が結構あります。また同地域に比較できる近隣物件は結構あります。また実際に新旧物件の比較をしてみたところ、価格動向がはっきりしていることが分かります。

比較1タンジョンパガ―のIconとSkysuites

タンジョンパガ―駅の近く、日本人特に独身や単身のの駐在員に人気のIconとSkysuites @ Ansonの2コンドのFT²当たりの売買価格を比較してみました。Iconは2007年完成646戸のコンドです。Skysuites @ Ansonは2015年完成360戸のコンドです。2つのコンドは隣同志という位置関係です。

データ:URA Property Data https://www.ura.gov.sg/Corporate/Property/Property-Data/Private-Residential-Properties

完成した時期が8年位違いますが、明らかに売買価格に開きがあります。平均を取ると$560程の差がありました。2019年初めにギャップが狭くなっているところがありますが、2018年7月に政府が住宅不動産急騰を懸念してABSDの5%引き上げを発表した影響で取引事例が少ないところで出た影響と思われます。

比較2リバーバレーのMartin Place とMartin Modern

両方ともにリバーバレー・ロードとロバートソン・キーの間に位置するコンドですが、Martin Place Residencesは2011年の完成大きな敷地に巨大なプールがある人気コンドです。Martin Modernはその後ろのロバートソン・キーよりですが、まだ建設中です。

Martin Modern はちょうど2017年の後半から分譲が始まりました。グラフから見て取れるように2017年中は余り価格差がありません。ディベロッパーが価格を低めに設定して売り出したことが見て取れます。2018年に入って価格設定をあげて7月までは順調に価格が上昇しています。ただその後上記で述べた政府の抑制策のABSDの一律5%引き上げにより、下降気味になっています。この2つのコンドの価格差は平均すると$424となっています。ただ2017年の数値を除くと$516となっています。Martin Placeの方は2019年後半以降売買取引が無く価格動向は見えませんが、同じような価格さが出るものと推測されます。

でも古い物件は安く買えるのでは?

勿論、古い物件はその分安く買えます。ただその後の価格の伸びが新しい物件程期待できないということが分かってきています。上のIconとSkysuitesのグラフではその辺が良くでていると思います。勿論価格はマーケットに左右されますので、マーケット上昇があれば新旧共に価格が上昇しますが古くなれなばなるほど、伸び率が鈍ってくることになります。皆さんもEn-Blocセールというものをご存知かと思いますが、En-Blocの可能性が出てくると古い物件でも価格がかなり上がります。それは建物を除いて土地だけの価値で言うと新築物件と同じ価値とみられるからです。でも逆に言い換えると、古い物件はそれだけ価値が下がってしまっていることを意味します。ということで私共は投資物件としては、新築の物件を御薦めします。